トプカプ宮殿の至宝展 〜オスマン帝国と時代を彩った女性たち〜 |
ヨーロッパとアジアを結ぶ東西の架け橋・イスタンブールを中心に、600年あまりも世界に君臨した「オスマン帝国」。その最高権力者であるスルタンが住んだのが「トプカプ宮殿」です。 |
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・東京都美術館 2007年8月1日〜9月24日 |
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トプカプ宮殿・ハーレムの「帝王の間」 |
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世界帝国に君臨したスルタンたち オスマン帝国は、スルタンが君主の花押であるトゥグラを押した勅令や勅許状で広大な領土の統治をした中央集権国家でした。花押入りの公式文書をはじめ、華麗な装備を身にまとい大軍を指揮して外征をした歴代スルタンの肖像画や馬印(トゥー)など興味深い展示がなされています。 |
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武器・軍装品 オスマン帝国のスルタンは強力な軍事力のもとに外征を繰り返し、異教徒を含め諸国を呑み込んで周辺諸国の恐れる大国へと成長していきました。それゆえ、オスマンのスルタンにとって儀礼の際の軍装は、その権力を誇示するものとして非常に大切なものでした。 ここに紹介する兜のほかにも、刀剣や石銃、斧などの様々な武具の展示がなされていましたが、豪華な金があしらわれていたほか、トルコ石やルビーなどの宝石が使用されるなど豪華に装飾されたものが数多くありました。 また、イスラムの信仰を示す言葉などが刻まれているのも特徴で、オスマン帝国では信仰と軍事活動が一体を成していたことの証です。 |
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いざという時のため スルタンも「手に職」? 本当か嘘か、スルタンは失脚の場合に備え手に職をつけていたそうです。コンスタンティノープルを征服した15世紀半ばのメフメット2世は「庭師」で、16世紀に大帝国を築いたスレイマン1世は「金細工師」、そして19世紀末に専制政治を強いて恐れられたアブデュル・ハミト2世は家具造りが得意だったそう。なんと庶民的な、、!? しかし、オスマン帝国では、スルタンに即位できなかった王子は、同母の兄弟であっても処刑されるのが慣例になっていたそうで、果たしてその「手に職」が生かされたのかが気になるところです。 もっともそれでは王家の血筋が途絶えてしまうので、そんな極端な慣例は17世紀になってから廃止されたそうです。スルタンの兄弟だちは処刑はされませんでしたが、鳥籠(カフェス)と呼ばれる宮殿内の館に軟禁され監視生活を送るようになったのです。 |
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★コーラン書見台 |
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★宝飾コーラン・カバー |
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←私も購入した オススメの1冊です。 オスマン帝国の領土の 変遷については※こちら |
★宝飾水柱・水盤 トルコの宮廷では、食事前などに部屋の中で手を洗う習慣があり、このように美しい水柱(ポット)と水盤のセットが数多く残されています。 |
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優雅な宮廷生活 優雅な宮廷生活を彩った日常用品も豪華な装飾のなされた芸術的なものがたくさん。トルコならではの習慣を垣間見ることができ、とても興味深い展示でした。 オスマンの宮廷では、ピラフやスープでも個別に盛り付けされることはなく、それぞれが大皿や鉢から取って食べたそうで、食器関係ではまばゆいばかりの金で作られたスープ用の鉢やピラフ用の鉢、シャーベット用ポット、宝飾スプーンなど見応えある品々が数多く展示されていました。 そのほか興味深いものとしては、美しい刺繍のなされた手拭いやスカーフ、「ラヴタ」と呼ばれるオスマン独特の弦楽器など。 |
★宝飾コーヒーカップ受け |
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★シャーベット用ポット |
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★ハマム用サンダル |
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団扇に込めた「秘めた恋のささやき」 女性の大事な装飾品であった団扇は宮廷生活の必需品の一つで、室内では大型のものを使い、外出時には小型のものを持って優雅に揺らすことで女性らしさを表現しました。 また、当時の女性たちは男性と自由に話すことが許されなかったため、団扇を使って自分の気持ちを相手に伝えていたそうです。 例えば、団扇を頬からずらすと「あなたを愛しています」という意味で、逆に団扇で顔をかくすと「あなたと知り合いたい」。また、右頬に扇を当てると「はい」を示し、左頬に当てると「いいえ」となるなど、団扇を使った言葉の信号が定着していたようです。 日本の平安時代の男女の恋愛の奥ゆかしさを思い出す興味深いエピソードでした。 |
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★化粧箱 |
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★宝飾団扇 |
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スルタンの豪華な宝飾品 スルタンをはじめ宮廷の人々の身の回りのものは、ゴージャスな宝飾に彩られた煌びやかなもので、オスマン帝国の栄華を物語っています。「ソルグチ」と言われるターバン飾りのほか、ベルトや王杖、宝石箱、水入れなど、あらゆるものにルビーやエメラルドなどの宝石が惜しげもなくふんだんに使われていて、ため息が出るばかり! |
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★ターバン飾り |
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衣装・装飾品 カフタンなどオスマン独特の衣服を中心にネックレスや髪飾り、刺繍腰布などが展示されていますが、興味を惹いた展示に「足環」がありました。 中東の女性はくるぶしに足環をはめる習慣があったそうで、足首の美しさを強調するための装飾品だったというが、歩いた時に鳴る音で若い女性の存在を知らせるものだったそうです。 薄いベールを被った女性 18世紀頃のイスタンブールの宮廷人や若い男女、外国人などのファッションを描いた作品集からの1枚。 |
★王女用刺繍ブーツ |
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★王子用カフタン |
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中国陶磁器 イスラム世界では、早くから中国の絹や、紙、絵画、陶磁器などが高く評価され、優れた芸術品の収集は支配者たちの権威の象徴でもあり、トプカプ宮殿は1万2千点にも及ぶ中国陶磁器を所有しています。 それらは、献上品・戦利品・交易品・徴税品など様々な経路で集まってきたものですが、オスマンの宮廷ではただ鑑賞するだけでなく実際に使用されていました。そして、水柱や水筒などトルコの文化・風習に合わせて加工も行なわれるようになり、トルコ文化を反映した陶磁器がイスタンブールで数多く生み出されました。そういった独特の興味深い陶磁器も今回の展示の目玉になっています。 また、オスマンの宮廷では青磁が珍重されていたそうですが、その理由の一つに毒殺除けの意味合いがありました。イスラム世界では青磁は毒が盛られた際には変色すると信じられていたそうです。 |
★青磁蓋 瓢箪型 浮牡丹文瓶 |
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★染付鳳凰花蔓草文水柱 |
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★金のゆりかご |
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