ギメ東洋美術館所蔵 浮世絵名品展
「ギメ東洋美術館所蔵 浮世絵名品展」 チケット   太田記念美術館 (東京・原宿)
  2007年1月3日〜2月25日 
  
※大阪へ巡回

「フランス国立ギメ東洋美術館」の浮世絵コレクションが里帰り。葛飾北斎の名作「龍図」ほか、選りすぐりの浮世絵の名品190点が前・後期で計4回の一部作品入れ替えで紹介されました。
「虎図」

「虎図」
(太田記念美術館蔵)
「龍図」

     「龍図」  

   (ギメ東洋美術館蔵) 
あれ! なんで混んでいるの?
 
久々に浮世絵を見たいと、近くまで行ったついでに原宿の太田記念美術館に行ってみました。のんびり楽しもうと思ってふらりと行ってみたら、美術館の前に列が出来ていてびっくり。 私は知らなかったのですが、フランス国立ギメ東洋美術館の「浮世絵名品展」というのをちょうど開催していたのでした。 入場制限をしていたので行列ができていたのですが、15分ほどして館内に入ると、そんなに広くない展示室ではそれほど混み合うことなく鑑賞することができました。

 多くの人が今回の展覧会につめかけている理由は、双幅である葛飾北斎の「龍図」と「虎図」の展示でした。 
 2005年7月にパリのギメ東洋美術館で「太田記念美術館所蔵 大浮世絵名品展」が開催された際に、作品調査の過程でギメ美術館に寄贈されたばかりの葛飾北斎の「龍図」が太田記念美術館所蔵の「虎図」と対幅であることがわかり、美術史上でも稀に見る大発見となりました。
 それまでこの「龍図」の存在は全く知られていなかったそうで、今回の展覧会で世界で初めて「虎図」と並べて展示されました。ギメ東洋美術館の浮世絵コレクション自体がはまとまって公開されたことなかったそうで、大変価値ある展覧会となりました。


★見事な迫力「龍図」と「虎図」

 その1対の掛け軸の展示スペースは畳に座って鑑賞できるようになっており、じっくり貴重な作品を堪能することができました。特に、龍図はとても落ち着いた深い色彩ながら重みと迫力があって、じっと眺めていると完全に圧倒されます。そして、横に並んだ「虎図」と一緒に鑑賞すると、下から見上げる虎の鋭い眼差しの先に龍の頭があることがわかり、画の魅力がさらにアップします。
 この2つの作品は北斎の没年に制作されたものだそうで、まさに北斎芸術の極致といえるのは疑いもないところです。


★その他にも多くの注目作

 そのほか、今回の展覧会には東洲斎写楽、鈴木春信、喜多川歌麿、勝川春英、歌川広重などのギメ美術館からの出品作が展示されてましたが、前期・後期ほか計4回の展示替えがあったそうなので、鑑賞したのはギメ東洋美術館の里帰り作品の一部でした。
 北斎好きの私には、北斎の作品では珍しい花の画や「千絵の海」「海老図扇面」などに目を奪われました。やはり「北斎は素晴らしい!」と再認識したのでした。
 そして、「国立ギメ東洋美術館」についてはほとんど知識がなかったので、展覧会会場で、エミール・ギメ氏がギメ東洋美術館を創設したあらましや興味深いエピソードなどを紹介したビデオを鑑賞しました。
「千絵の海 総州銚子」

「千絵の海 総州銚子」 葛飾北斎



葛飾北斎作の3作品


「月に雁」 歌川広重 
         「国立ギメ東洋美術館」
 ギメ東洋美術館は、フランスのリヨン出身の実業家エミール・ギメ(1836‐1918)の「古代エジプト信仰、古代ギリシャ・ローマ、アジア諸国に関する宗教博物館を創る」という一大プロジェクトから生まれました。
 エミール・ギメ氏は、プロジェクトの構想に則ってエジプトやギリシャ・中国・インドなど世界周遊の旅を実現し、日本も訪問して浮世絵ほか数多くの美術品を収集しました。
 それら世界各地で収集されたコレクションは、1879年よりギメ氏の出身地・リヨンで公開されはじめましたが、1889年にパリに建造させた博物館に移管されて「ギメ東洋美術館」として開館しました。さらに1928年に国立美術館に編入され、今も世界でも指折りの東洋美術コレクションを所有する世界屈指の美術館となっています。