下村 観山     (1907年作 東京近代美術館蔵)
「木の間の秋」
木の間の秋・左隻
 
 狩野芳崖や橋本雅邦に師事し狩野派からスタートした下村観山は、東京美術学校を経て、岡倉天心の主宰する日本美術院に参加し、横山大観らと新しい日本の近代絵画を探求していました。1903〜05年にかけて30歳頃の観山はヨーロッパに留学して西洋絵画も学び、強い影響を受けています。
 ヨーロッパで観山はラファエロやラファエル前派のジョン・エヴァレット・ミレイの作品の模写を水彩でしたことが知られていますが、その頃に描かれたこの作品には今までの日本画とは一味違った雰囲気を感じます。全体的に暗い色調で、手前をはっきりと描き、奥の方の木々は薄く描かれているために明るくなっており、遠近感が表現されています。手前に描かれた草木には写実的に描かれていますが、酒井抱一の「夏秋草図屏風」の表現や鈴木其一の草木や苔の描き方を彷彿とさせ、江戸琳派の影響も感じる作品です。