光の天才画家とデルフトの巨匠たち | ||||
光の天才画家ヨハネス・フェルメールが生涯で残した作品は、わずか数十点。そのうちの7点が一挙に展示されることで大きな注目を集めたこの展覧会は、開催から34日目に20万人、47日目に30万人の人々がつめかけたそうです。 |
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※デルフト・スタイルの画家へ |
フェルメール作品 | |||
「マルタとマリアの家のキリスト」 |
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作品の主題は、聖書「ルカによる福音書」からの1シーン。キリストが姉妹の家を訪問した際に、もてなしの支度をする姉マルタがキリストの話を聞くばかりで手伝いをしない妹マリアについて不平を言い、それをキリストが諭す場面。 | |||
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「ディアナとニンフたち」 |
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※ギリシア神話の狩りの女神ディアナがニンフたちと休息する場面。ディアナが出した足をニンフの一人が洗い、他のニンフたちはそれを見守っている。 | |||
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「小路」 |
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「ワイングラスを持つ娘」 ワイングラスを持ってこちらを向いている女性に1人の男性が顔を寄せて何かをささやいている―。口説こうといしているのか、微妙なシーンです。後ろに別の方向を見て頬杖をついて座っている男性が描かれていますが、彼はこの女性にフラれてしまったのか、不機嫌そうに見えます。女性は意味ありげな微妙な笑みを浮かべながら、まるで何かを訴えるような目でこちらを見ており、何が言いたいのかちょっと気になります。この絵は『節制』を主題にとった作品だそうで、ステンドグラスにもそれを意味した図柄が描かれています。 |
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「リュートを調弦する女」 女性はリュートを弾いているのではなく、調弦しているところで、身を乗り出して真剣な表情です。 |
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「手紙を書く婦人と召使い」 フェルメールの代表作の一つ「絵画芸術」が出品中止になってしまったために、追加で出展されることになった作品ですが、今回の7作品の中でも特に見とれれてしまった作品です。 |
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「カージナルの前に座る女」 2004年にフェルメールの新しい真作と認められ、話題をさらった作品だそうです。長い間、この作品はほとんど知られていなかったそうですが、近年の科学調査によって、フェルメールの作品にしか使われていない非常に高価な青い顔料(ウルトラマリン)を使っていること、この作品のキャンパスが「レースを編む女」(ルーブル美術館)という作品で用いたキャンバスと一致したとのことなどが決め手になったとか。 |
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デルフト・スタイルの画家たち | |||
17世紀中頃、オランダの小都市デルフトは退屈で保守的な街でした。ところが、突如、この街に革新的な画家グループが登場します。彼らは空間描写や自然光の描写、遠近法を用いて自然で幻想的な絵を生み出し、その技法は「デルフト・スタイル」と呼ばれました。彼らの活躍は1650年から1675年くらいまでの25年という短い期間で、1675年にフェルメールが没した頃には、「デルフト・スタイル」の技法の担い手たちは、アムステルダムなどへと活躍の場を移していったそうです。 |
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ヤン・ファン・デル・ヘイデン | |||
「アウデ・デルフト運河と旧教会の眺望」 左:1660年頃 デトロイト美術館、 右:1675年頃 オスロ国立美術館 | |||
風景画・景観画の好きな私は、まず一番最初に展示されていたこの2枚の絵に魅せられました! |
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ヘラルト・ハウクヘースト | |||
「デルフト教会の回廊」 (1651年頃 マウリッツハイス王立美術館) |
「ウィレム沈黙公の廟墓があるデルフト教会」 (1651-52年頃 個人蔵) |
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教会の内部が実に見事に芸術的に描かれていてびっくりですが、現実ではありえない光景を描いた実験的作品だそうです。実際の教会ではこのように天井と床を一緒に見ることができないそうで、二点透視図法という画法を用いて、魚眼レンズのように描いています。 |
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ていますが、彼らは絵の依頼主夫妻だと推測されるとか。そういう絵画の裏話的な補足はリアリティがアップしてさらに興味深く絵を見ることができます。 |
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ヘンドリック・コルネリアスゾーン・ファン・フリート | |||
オルガン・ロフトの下から見たデルフト新教会の内部 (1662年頃 個人蔵) |
オルガン・ロフトの下から見たデルフト旧教会の内部 (1662年頃 個人蔵) |
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名前がとても長〜いこの画家は、ハウクヘーストと同様、教会内部の画を数多く描いた画家ですが、柱の高さや奥行きを実際よりも延長して表現するなどの特徴が見られます。 |
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エマニュエル・デ・ウィッテ | |||
「デルフト新教会の内部」 (1655年 ヤコブ・ブリナー財団) |
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「ヴァージナルを弾く女」 (1665年 ボイマンス美術館) |
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ウィッテも教会内部の画を得意とした画家ですが、人物画や風俗画も数多く描きました。今回の展覧会には異なる雰囲気の2つの作品が出品されました。 「ヴェージナルを弾く女」は、不思議な魅力を持った作品です。ベッドの脇には男の脱ぎ捨てた衣服と剣が描かれ、よく見るとベッドに男が寝ていて、女の奏でるヴァージナルに耳を傾けています。そして、二つとなりの部屋では召使が掃除をしたいる姿が描かれ、手前の寝室と奥の部屋の遠近感が見事。 |
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カレル・ファブリティウス | |||
ファブリティウスの名は初めて聞きましたが、レンブラントの弟子の中でも最も才能がある画家の一人といわれていた人物だとか。次第にレンブランドの影響を脱して独自の画風へと進み、肖像画を描いたほかトロンプ=ルイユ(騙し絵)の表現法を確立。フェルメール、デ・ホーホとともにデルフトの中心的な画家として活躍していました。フェルメールの師であったという説もあるそうです。 |
「歩哨」 1654年頃 シュヴェリン国立美術館 |
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「楽器商のいるデルフトの眺望」 1652年頃 ロンドンナショナルギャラリー ※ファブリティアスの代表作の一つで、錯視的遠近法を駆使して描かれた作品。 |
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ピーテル・デ・ホーホ | |||
《その他の出品作品》 |
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「アムステルダム市庁舎、市長室の内部」 (1663−1665年頃 ティッセン・ボルネミッサ美術館) |
「食糧貯蔵庫の女と子供」 (1658年頃 アムステルダム国立美術館) |
「窓辺で手紙を読む女」 (1664年 ブタペスト美術館) |
「幼児に授乳する女性と子供と犬」 (1658−60年サンフランシスコ美術館) |
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←「女主人への支払い」 左: 1658年頃 個人蔵 右: 1674年頃 メトロポ リタン美術館 ※「女主人への支払い」は人気のあったテーマだったようで、デ・ホーホの2作品のほか、ルドルフ・デ・ヨングの作品も展示。 |
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