〜華やぎのジュエリーから煌めきのガラスへ〜 |
||||
アール・ヌーボー期にジュエリーデザイナーとして活躍し、20世紀初めにはアール・デコのガラスデザイナーとして一世を風靡したルネ・ラリック(1860−1945)。その作品は、東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)のガラスのレリーフや個性的な照明などで鑑賞することができ、日本でもおなじみです。 |
||||
|
第1部 華やぎのジュエリー | ||||
ブローチ 〈ケシに囲まれた女性〉 |
ブローチ 〈パンジー〉 |
ブローチ 〈枯れ葉〉 |
||
|
ハットピン 〈ケシ〉 |
||
1897年のサロンに出品され、国がリュクサンブール美術館のために買い上げた作品で、ラリックの出世作となった1品。 |
||
|
〜 グルベンキアンの愛したラリック 〜 | ||||
ラリックの顧客台帳には大女優サラ・ベルナールをはじめとして世界中の伯爵や文豪が名を連ねていたそうですが、こうした華やかな交友関係の中でも特にラリックに深い影響を与えたのがイスタンブール出身の実業家で美術品コレクターであったカルースト・グルベンキアン。石油発掘で財をなした彼は、ラリックの生み出す芸術世界に魅せられて長く親交を結び、彼の作品を170点も収集。後にリスボンにカルースト・グルベンキアン美術館を創設したとか。この美術館の所蔵品の中から、今回は珠玉の34点が展示されました。 |
|
||
これがティアラであるということは抜きにして、というか、頭の上に乗せるというのは想像できなかったのですが、まばゆいばかりに美しい宝飾品でした。ラリックのジュエリーデザイナー時代の代表作といえる逸品に間違いありません。 |
||
ティアラ 《雄鶏の頭》 1897−98年 | ||
|
||
深い緑が独特な輝きをしていて、ライトの光で幻想的でした。騎馬試合の様子が浮き彫りになっているのですが、しっかりと浮き上がっていて立体感があります。「省胎七宝」という技法を使ったものだとか。ラリックのジュエリーは女性的なデザインが多いので、勇ましい戦いがテーマのこの作品は新鮮に感じました。 |
||
コサージュ・オーナメント 《騎馬試合》 1903‐04年 |
||
|
第2部 煌めきのガラス | |||
このガラスのコーナーの最初の方は、20世紀の分岐点を挟んだ1990年代から1910年代ごろまでのアールヌーボーからアールデコへの過渡期にあたる時期の作品が展示されていました。そして、アールデコの花瓶たちの展示された会場へ。このコーナーは今回の展示の目玉なのか、照明を落とした広い会場にゆったりと展示されており、どれも存在感のある輝きを放っていました。どっしりとした花瓶たちはインパクトのある作品が多く、見応えがありました。 |
|||
花瓶 《菊に組紐文様》 1912年 |
花瓶 《バッカスの巫女》 1927年 |
||
花瓶 《つむじ風》 あるいは 《渦巻のレリーフ》 1926年 |
|||
シール・ペルデュ | |||
気付け薬用小瓶 《魚》 |
続く「シール・ペルデュ」のコーナーも芸術性の高い個性的な作品がいくつも展示されていました。 「シール・ペルデュ」というのはガラス製作の技法の名称ですが、言葉自体が初めて聞いた素人なので、解説をしっかりメモ。「蝋でつくった原形を耐火石膏で覆い、全体を加熱して蝋を溶かし、脱蝋した後の空洞にガラスを注入して形を作り上げる方法」だそうです。 |
||
水差し 《小さな牧神の顔》 |
|||
1925年にパリで開催された「現代装飾美術産業美術国際博覧会」(通称:アール・デコ博覧会)。パリ中心部に会場を設け、世界各国から現代生活にふさわしい装飾芸術を集めたこの博覧会には、約半年の会期中に1千500万人もの入場者が訪れました。このイベントでの「装飾美術(アール・デコラティフ)」という言葉が、「アール・デコ」とう呼び名の由来となったそうです。 |
||||
贈答品としても珍重されていたそうです。日本の皇族にもゆかりがあり、「アール・デコ博覧会」を訪問した朝香宮ご夫妻はラリックの作品に魅せられ、白金台に新しい宮邸(現・東京都庭園美術館)建設の際に、ラリック社製の玄関扉やシャンデリアが納められました。 |
||||
香水瓶 | |||
ルネ・ラリックは1908年に、コティ社から依頼を受け、香水瓶のデザインを始めました。これよりラリックは産業芸術家への道を歩み始めることになり、人々の生活に身近なものを手掛けるようになっていきます。 |
|||
香水瓶 《カシス》 1920年 |
香水瓶 《彼らの魂》 1913年 |
||
|
|||
20世紀に入り工業の発展が進むにつれて、ラリックの活躍の場は人々の生活の場全体に広がります。展示の後半は、ラリックが手掛けた様々な分野の作品が惜しみもなく展示されていました。 |
||
その後に続く「室内のエレガンス」というコーナーも、とても魅惑的でした。特に、テーブル・センターピースや常夜灯は、とてもエレガントで芸術的! 現代では装飾的すぎて実用的ではないかもしれませんが、こんな素敵なものに囲まれた空間で毎日の生活が送れたら、どんなに優雅な気分に浸れるだろう・・・と想像しただけで、わくわくしてしまいました。 |
||
カーマスコット「勝利の女神」 1928年 | ||
常夜灯「二羽の孔雀」 1920年 |
テーブル・センターピース 「火の鳥」 1922年 |
|