宮殿を飾る 東洋の煌めき |
サントリー美術館 (東京) 京都国立博物館:2008年10月18日〜12月7日 |
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フランスのヴェルサイユ宮殿美術館などが所蔵するマリー・アントワネットのコレクションをはじめ、イギリスのヴィクトリア&アルバート美術館、ドイツのピルニッツ宮殿、スウェーデン王室などに残された貴重なコレクション、国内からも国宝や重要文化財を含む数々の名品が展示されました。 18世紀のヨーロッパの王侯貴族の宮殿や邸宅にシノワズリと呼ばれる東洋の工芸品が美しく飾られましたが、その中でも日本の漆は「japan」と呼ばれ珍重されました。その時代のゴージャスかつ緻密な調度品のほか、ハプスブルク家の女帝マリア・テレジアやその娘のマリー・アントワネットが大切にした小さくてキュートな蒔絵コレクションなど見ごたえのある展示がたくさんでした。 また、今回の展示会では、日本での「蒔絵」の誕生から西洋の宮廷文化における蒔絵の流行からその後まで、蒔絵の歴史が丁寧に解説され、芸術と歴史を同時に愛する者にとっては満足感の高いイベントでした。約240点以上もの展示品がありましたが、気になったものはメモを取りながらじっくり鑑賞しました。日本とヨーロッパの美術や歴史が大好きな私にとってとても有意義な美術展でした。 |
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「蒔絵」は、ウルシの樹液と金属粉を用いて文様を表現する工芸技法。元々は大陸で生まれたものですが、日本で独自の発展を遂げました。 |
第1章 「中世までの日本の蒔絵」 | ||
第1章では、日本における輸入漆器の誕生前の蒔絵の変遷が紹介されました。 |
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浮線綾螺鈿蒔絵手箱 (蓋裏) |
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《国宝》 宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱 (仁和寺 平安時代) 空海が唐から持ち帰った経典を納めるため、919年に醍醐天皇が空海の没後に作らせた経箱。植物系文様の宝相華唐草文と人頭鳥身の想像上の生物である「迦陵頻伽(かりょうびんが)」を金銀の蒔絵であらわした箱。 |
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《重文》 小倉山蒔絵硯箱 (15世紀 室町時代) |
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第2章 「西洋人が出会った蒔絵」 高台寺蒔絵 | ||
豊臣秀吉の天下統一後、京都では城郭や寺院が多く建てられ、豪壮好みの武将たちは室内の内装を煌びやかに飾るようになりました。そして、日用品や調度なども装飾性の高い品々が好まれるようになり、華やかな文様を凝らした蒔絵が施されました。黒漆に金粉を撒くだけの「平蒔絵」、文様に梨地を用いた「絵梨地」、漆が乾く前に針で引っかいて模様をつけた「針描」などの技法を用いて、格式と装飾性の高い実用品が制作されました。この時代の蒔絵を「高台寺蒔絵」と呼びますが、その呼び名は秀吉の正室・北政所が夫の菩提を弔うために建立した高台寺に由来しています。 |
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《重文》 秋草蒔絵鏡台 |
《重文》 南蛮屏風 (桃山時代 伝狩野山楽筆) | |
《重文》 菊枝桐紋蒔絵提子 |
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第3章 「大航海時代が生み出した蒔絵」 南蛮漆器 | |||
16世紀にはキリスト教の布教を目指すイエズス会の宣教師やポルトガルやオランダの商人たちが日本に続々とやってきました。日本の蒔絵に魅了された彼らは、蒔絵を施した祭礼具や調度品を注文し、それを本国へ持ち帰ったり、他国へ輸出するようになったそうです。彼らは日本の蒔絵をそのままヨーロッパに持ち出したのではなく、ヨーロッパの人たちの好みにマッチし、その生活に合うような実用的なアイテムを日本の漆職人たちに注文するようになったため、今までの日本の蒔絵とは違った「南蛮漆器」というカテゴリーが誕生しました。 |
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IHS草花蒔絵螺鈿聖餅箱 |
IHS木彫彩色箔押書見台 |
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キリストの身体を象徴しているパン(オスチア)を入れる容器。オスチアはミサで使用される。 |
IHS花入籠目文蒔絵螺鈿書見台 |
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花鳥蒔絵螺鈿聖龕 三位一体像 |
花鳥蒔絵螺鈿洋櫃 |
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聖龕 (せいがん)・・・キリストの磔刑図や聖母子像などを収める厨子 |
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第4章 絶対王政の宮殿を飾った蒔絵 紅毛漆器 | |
桃山時代には盛んだった南蛮貿易ですが、宣教師同士の対立や商人の思惑が絡み合いなどから、日本の外交政策は次第に状況が変わっていきました。17世紀初めには禁教令が出され、徳川幕府のもとでスペインとポルトガルは国外追放となりました。ヨーロッパとの交易はオランダが独占され、、輸出される漆器の様式も次第に変化していきました。 |
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ファン・ディーメンの箱 バタヴィアの総督アントニオ・ファン・ディーメンの妻マリアのために作られたもので、蓋の裏側には、「MARiA,UAN,DiEMEN」と蒔絵で描かれているそうです。後にポンパドゥー夫人の所蔵となったことで知られている品。李朝風の牡丹唐草の縁文様に源氏物語の断片が描かれており、日本と中国の文化の入り混じったデザインが興味深い。これぞオリエンタル!? |
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見た途端に、驚嘆の見事さでした。なんて、細かい細工なんでしょう! |
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※マウスを画像に乗せると櫃の前面の拡大写真が見れます。 | |
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山水花鳥蒔絵螺鈿箱 《(トイレットボックス》 |
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楼閣山水蒔絵コモド 紅毛漆器の初期の家具は、箪笥や櫃を台に載せるだけのものでしたが、18世紀のフランス宮廷ではそういったシンプルな形状の家具は時代遅れとなりました。古い調度から表面の蒔絵を厚さ数ミリだけ剥ぎ取り、ロココ様式の最新の家具に貼り付け、金銅製のマウントで飾り立てる様式が確立しました。 |
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楼閣山水蒔絵ポプリ入れ |
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第4章 蒔絵の流行と東洋趣味 | |
蒔絵が貴族の居室を飾るようになった背景には、後に「シノワズリ」と呼ばれることになる東洋趣味の流行がありました。「シノワズリ」は直訳すれば「中国趣味」となりますが、当時のヨーロッパの人々は日本も中国もインドも区別せずに“東洋”としてひとまとめにしていました。日本の蒔絵は英国では「ジャパン」と呼ばれましたが、フランスでは「中国のラッカー」、ドイツでは「インドのラッカー」と呼ばれていたそうです。 |
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唐子ジャパニング書き物机 |
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楼閣山水蒔絵水注 |
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第6章 王侯のコレクションと京の店先 | ||
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マリー・アントワネット |
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このコーナーでは、ヴェルサイユ宮殿美術館、ギメ東洋美術館、ゴータ・フリーデンシュタイン城美術館、スウェーデン王室、バーリーハウスのコレクションなどからたくさんの蒔絵が里帰りして展示されました。珍しい形のものや遊び心いっぱいの品など個性的な展示品がずらりと並びました。 |
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源氏絵巻硯箱 |
蒔絵瓜形香合 |
蒔絵鶏形小重箱 |
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