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ちょっと前にNHKの美術番組「迷宮美術館」を見ていて、昆虫をメインに草花や動物などの素晴らしい細密画を描く 熊田千佳慕さんという画家の存在を初めて知りました。 彼の描いた昆虫や植物の緻密さは驚くべきもので、かなりのインパクトがありました。いくつかの美術番組を見ていますが、ここ数年の中でもあまり味わったことのない新鮮な感動でした。しばらくして、夏休みに銀座のデパートで個展が開催されるということを知り、これは必見!と楽しみにしていました。
しかし、まさに展覧会に行く前の日の夜、何気なく新聞を見ていたら、なんとその千佳慕さんが亡くなったという訃報が目に入りました。なんというタイミングなんでしょう・・・(涙)。
千佳慕さんは数えで99歳、数ヶ月前から体調を少し崩し入院したりしていたそうですが、肺炎でお亡くなりになったとか。亡くなったのは13日だそうですが、前日の12日はちょうど展覧会の開始日でした。たくさんの人で盛況だという話を聞いてよろこんでいらっしゃったそうです。
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※展覧会チラシより
(鑑賞日:2009年8月14日) |
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デパート開催の展覧会は会期も短いため混雑していることが多いですが、やはり千佳慕展はたくさんの人でにぎわっていました。夏休みということもあると思いますが、子供連れの方が多かったのですが、お子さんの目線では絵の位置が高すぎるのがちょっと気になりました・・・。
千佳慕さんの作品はテレビの番組やWEBで作品はいくつか見ていましたが、原画は本当に素晴らしかったです。メインの昆虫や花は当然のこと、草や土、根っこまで画面のものすべてが非常に緻密に描かれているのです。
どうやったらこんなに細かく描けるのだろう!?というレベルの緻密さなのですが、彼は外で昆虫や草花など描く対象をじっと観察して頭の中に焼き付け、アトリエである自室に戻るとひたすら描くそうです。観察する時には、チラシの裏面にある写真のように、昆虫などその対象物と同じ視線で観察するために、しゃがんだり這いつくばったり、、、。その姿にはすべての生物に対する愛情が感じられます。そして、一つの作品にはじっくり3カ月ぐらいかかり、長いものでは数年かけて少しずつ仕上げたものもあるのだとか。おどろきです!
千佳慕さんは、「ファーブル昆虫記」の虫たちを描くことをライフワークとしていたため、「日本のプチ・ファーブル」と呼ばれていたそうです。展示も昆虫メインの作品が多かったですが、産卵や孵化、巣作りなど昆虫の生態を説明するような作品など、あまり知識のない私でもとても興味深かったです。「ファーブル昆虫記」も読んでみたくなりました。
展示作品は約200点もあり、1点1点の見ごたえもあるのでかなりのボリュームでした。原画は大きいのでかなりの迫力があるし、すぐ目の前で見れるので細かい筆致一つ一つまで見ることができます。昆虫や草花のほかにも野菜や動物なども描いた作品も展示されていたのですが、どれもみんな高いクオリティで、その色彩と描写力に圧倒されました。図録や絵ハガキなど買いましたが、やっぱり原画の素晴らしさには到底及びません。ぜひ、機会があったら多くの人に実際に鑑賞してほしい!そう思わせる素晴らしさでした。
99歳で天寿を全うされたとはいえ、本当に惜しい人を失くして残念。
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