ヴィラ内はウィーンの王宮に比べると、こじんまりとしてシンプルですが、その分、フランツ・ヨーゼフとエリザベートの愛用の品が当時のままに展示されていて、その人となりや生活の息吹を感じさせてくれます。
部屋にはシシィが愛したバイエルンの自然を描いた風景画が飾られているほか、馬好きのシシィらしく馬の絵が何十枚もかけられた部屋もあります。また、ヨーロッパ各国の大使に集めさせた美女の写真を並べた衝立も飾られており、若さとプロポーション、自らの美貌を保つことにこだわったシシィの一面を垣間見ることができます。
そして、皇帝用の階
段室には狩の好きだっ
たフランツ・ヨーゼフが
仕留めたたくさんのカモ
シカの角や様々な剥製
が綺麗に展示されてい
ます。
ハプスブルク家の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世は、1854年4月にいとこでヴィッテルスバッハ家のバイエルン公女エリザベートと結婚しました。このカイザー・ヴィラは、結婚のお祝いに皇帝が両親から譲られた館でした。
バード・イシュルはフランツ・ヨーゼフと皇妃エリザベート(愛称シシィ)が初めて出会った思い出の地ー。この別荘とバード・イシュルの街が気に入っていた2人は、結婚後も夏の避暑のために、狩猟の館として頻繁に滞在したそうです。ウィーンの窮屈な宮廷生活を嫌い、始終ヨーロッパ各地を旅していたシシィもこのカイザー・ヴィラの落ち着い佇まいには心を癒されていたようです。
元々この館はII型の形をしていたそうですが、皇帝がエリザベートのEの字をとったE字型に改装させたそうです。心を病み常に旅に明け暮れる愛する妻シシィ、、、。遠く離れていても、フランツ・ヨーゼフの心の中には常に愛するエリザベートがいたのでした。
そして、1898年に皇妃エリザベートは刺客に襲われ突然の死を迎えましたが、それ以後、皇帝はこのカイザー・ヴイラで亡き妻との思い出に包まれて、寂しい心を癒していたのでした。
時は流れて1914年、皇帝フランツ・ヨーゼフは自らの死の2年前に、このカイザー・ヴィラで第一次世界大戦の宣戦布告文に署名をしたといわれています。そして、フランツ・ヨーゼフの死後、カイザー・ヴィラは娘のマリー・ヴァレリーに受け継がれ、今日も彼女の子孫に受け継がれています。