1668年頃のベルサイユ宮殿
1668年のベルサイユ宮殿
王妃マリー・テレーズ 
スペイン王フェリペ4世とエリザベト・ド・フランスの娘。母エリザベトは、フランス王13世の妹にあたる。ルイ14世とは従兄妹同士の結婚だった。王太子の母となる。(1638生~1683没)
若きフランソワーズの夫スカロンは、8年後の1660年に死去。25歳で未亡人になったフランソワーズは、また生活に苦労するようになりました。しかし、運命は少しずつ巡ってくるのです。1667年、王が催した舞踏会に出席する機会を得て、宮廷社会への縁が開きました。そして1669年、国王ルイ14世と公式愛妾のモンテスパン侯夫人との子供たちの養育係の仕事を依頼され、華やかな宮廷へ出仕することになったのです。教養高く、子供好きのフランソワーズにとってはまさに適職で、実母以上に子供たちに深い愛情を注ぎました。特に、足が少し不自由だったメーヌ公を特に慈しみ、母のように慕われたそうです。
 
 フランソワーズの仕えたモンテスパン侯爵夫人は、国王の寵愛をバックに宮廷を我が物のように尊大に振舞っていました。フランスには「公式愛妾」という制度があって、国王により公式に愛人として認められると、称号が与えられ、国王との間に授かった子供たちにも貴族として高い地位が約束されていました。国王の正式な配偶者としての位置付けや格としては王妃に並ぶことはできませんでしたが、宮廷の女主人としての確固たる権勢を誇ることができたのです。
 
 「太陽王」と呼ばれた偉大なルイ14世の王妃は、スペイン王女のマリー・テレーズでした。王妃との間には6人の子供が生まれたものの、フランス語を流暢に話すことができず、地味でおとなしい王妃はルイ14世の愛を独り占めすることはできませんでした。ルイ14世は青年の頃、宰相マゼランの姪マリー・マンチーニと熱い恋を体験しましたが、引き裂かれて破局。そして王妃との結婚後、最初にルイ14世の愛をつかんで公式愛妾となったのは、ルイーズ・ド・ラヴァリエール嬢でした。
 王弟妃アンリエット・ダングルテールの女官だったルイーズは、最初はルイと王弟妃の逢引のカモフラージュ役だったそうですが、その可憐な容姿と純真無垢な初々しさで青年王ルイのハートを射止めました。ルイーズは国王の子を5人も出産しましたが、彼女はルイを心から愛しているだけで、ルイからの愛情のほかは地位も財産も何も欲しませんでした。常に王妃に気を使い、控えめで謙虚な姿勢を崩さなかったのです。しかし、やがて王の寵愛は妖艶なモンテスパン侯爵夫人に取って変わられてしまいます。

 モンテスパン侯爵夫人は、本名をフランソワーズ・アテナイス・ド・モルトゥマールと言い、ブルボン家につながる名門の出身でした。23歳頃にモンテスパン侯爵と結婚していますが、結婚前から王妃付の女官とて宮廷に出仕しており、1567年ごろからルイ14世の寵愛を独占するようになったようです。
 モンテスパン侯夫人は真っ白の肌をもち妖艶な雰囲気を漂わせた大人の魅力にあふれた女性で、国王ルイもその魅力の虜になってしまいますが、王の寵愛を独り占めにしようというモンテスパン侯夫人の執念はすざましいものでした。当時、パリで流行していた女魔術師ラ・ヴォアザンの元に通い、何度も黒ミサ(主に嬰児の生贄にした祈祷など)を行なったり、怪しげな媚薬を購入して、ライバルの追い落としと王の寵愛の独占を願ったのでした。その効果があったかはともかくとして、国王ルイは彼女に夢中になり、王の子を次々と6人も産んで、思いのままの立場を手に入れたのでした。
  また、勝気で自己顕示欲の強いモンテスパン侯夫人は、ライバルであるルイーズを見下して横柄な態度を取ったり、意地悪をすることは日常茶飯事でした。それどころか、同じく国王の子を生み伯爵夫人の称号を持つルイーズを召使のようにこき使って優越感に浸っていたとさえいいます。ルイーズにとっては辛い日々でしたが、愚痴も言わずに健気に耐えていたのは、少しでも愛するルイの近くにいたいという想いからでした。彼女にとっては、国王といえども命をかけて愛するただ一人の人だったのです。

 フランソワーズことスカロン夫人が養育係として宮廷に出仕したのは、こんな女の闘いの真っただ中でした。
20歳前後のルイ16世
「ルイーズ・ド・ラヴァリエール嬢と2人の子供たち」
ラヴァリエール嬢 「ルイーズ・ド・ラヴァリエール嬢と2人の子供たち」
ルイ14世との間に5人を授かったが、成長したのはマリ・アンヌ(のちのコンデ公妃)とルイ(ヴェルマンドワ伯爵)の2人で、その美男美女ぶりは目をひいたという。
              
マントノン候夫人肖像
第2話. 知性をかわれ養育係として出仕した宮廷、、、
         そこは国王をめぐる女の闘いの場だった。

             
モンテスパン侯爵夫人
モンテスパン侯爵夫人
(フランソワーズ・アテナイス・ド・モルトゥマール)
マントノン侯夫人②