ヴァロア朝第９代フランス王。アングレーム伯シャルルとルイーズ・ド・サヴォワとの間にパリ南西のコニャックの城で生まれた。父の従兄にあたるフランス王ルイ１２世が世嗣がいないまま死去したたため、１５１５年にフランソワが後継者として即位した。王権を拡大し、フランス絶対主義の基礎を築いた王として名を残し、フランス最初のルネサンス君主とされている。

　ルイ１２世とブルターニュの女公爵である王妃アンヌ・ド・ブルターニュとの間に生まれたクロードと王太子時代に結婚し、１５１５年にルイ１２世の死去によりフランス王位を継承した。２代前の国王シャルル８世が始めたを継続して貪欲にイタリア進出を図り、１５１５年ミラノ公国を占領してスフォルツァ家を追放した。
　　１５１９年、神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン１世が死去すると、フランソワも後継者候補として皇帝選挙に立候補したが、スペイン王カルロス１世（皇帝マクシミリアンの孫）に敗北。カルロス1世が皇帝カール５世として即位することになり、フランスはハプスブルク家によってドイツ・スペインと周囲を囲まれてしまう。これ以後、フランソワ１世は強力なハプスブルクの勢力に対抗するために、宗教を問わず様々な相手と手を結ぶことになる。
　　１５２１年～４４年のイタリア戦争では、カール５世の皇帝軍とイタリアの覇権を巡って激しく争った。そして１５２５年のパヴィーアの戦いでは、フランソワ１世は自ら前線で指揮を取りるものの、皇帝軍の捕虜となりマドリッドに１年近く幽閉された。しかし、マドリッド条約を結び釈放されるや２人の王子が人質になっているにもかかわらず条約は無効と宣言し、ブルゴーニュの返還などを拒否した。これを教皇クレメンス７世もこれを支持し、反ハプスブルクの同盟を結んだことから、「サッコ・ディ・ローマ」と呼ばれるローマの略奪につながり、歴史上に大きな傷跡を残すこととなった。
　その後も、フランソワ１世は、ドイツのプロテスタント諸侯（ルター派）を支援したり、異教徒であるオスマン・トルコのスレイマン１世 と密約を交わし、第１次ウィーン包囲を支援した。フランソワ１世自身はカトリックの信仰であり、檄文事件をきっかけに国内のプロテスタントを弾圧した。
　１５３２年にはブルターニュ公国をフランスに併合し、今後フランス王太子は代々ブルターニュ公を名乗ることになる。の王権の強化に成功し、王国としての支配の基盤を築き、フランスはフランソワ１世の時代に着々とヨーロッパの中心的な存在となっていった。また、ジャック・カルティエをカナダ植民に送り出し、フランス領カナダ（ケベック州）の基礎を築いている。
　

　また、フランソワ１世はフランスにルネサンス文化を花開かせた王としても有名。王は度重なるイタリア遠征によってイタリアの洗練された文化と芸術にに強い憧れを持っていたが、ミラノを征服した際にそれまでスフォルツァ家に仕えていたレオナルド・ダ・ヴィンチをフランスへ招いたことがフランスにルネサンス文化を伝わるきっかけになった。フランスではイタリアルネサンスの影響を人文主義者（ユマニスト）の教育を受け、即位後はレオナルド・ダ・ヴィンチ、ロッソ・フィオレンティーノらの芸術家を保護し、フォンテーヌブロー宮殿などルネサンス様式の宮殿を建てた。１５３０年には、のちに「コレージュ・ド・フランス」となる「コレージュ・ド・ロワイヤル」を設立し、ヘブライ語、古代ギリシア語、数学の研究を促進させた。